アメリカの建築の巨匠、フランク・ロイド・ライト(1867-1959)をご存じですか。
大正時代に来日して帝国ホテルを設計したとして知られています。
阪神間にはこのF.L.ライトゆかりの建築があります。
先日その見学に行ったので、今回はそのうちのひとつ「旧甲子園ホテル(武庫川女子大学 甲子園会館)」をご紹介します。
旧甲子園ホテルは実際にはライトの愛弟子である遠藤新(えんどうあらた)(1889-1951)
の設計になりますが、ライトの意匠を継承する独創的な名建築です。
屋根には淡路産の緑釉瓦、日華石と素焼きタイルの壁、ホールの光天井の格子の障子、そして打出の小槌をモチーフとしてあちらこちらに用いるなど、洋式建築に巧みに日本の伝統美を取り入れています。
私の第一印象は、どこか南国の建物もしくは遺跡のように感じましたが、センスないのかなぁ・・・。
正面玄関を入ると風除室で、天井にはこのランプ。アール・デコのような幾何学デザインで優しい明かりが白い漆喰の壁・天井に映えます。
それから、ロビーに入ると柱がこのようになっています。バブル期にもあり得なかった贅沢さですよね。
このホールではかつて結婚披露宴が開かれたそう。想像するとうっとりしてしまいます。
それからガイドをしてくださった武庫川女子大学の方の裏ネタによると、阪神タイガースの「六甲おろし」が初めて演奏された場所だとか。虎キチにとっては甲子園に次ぐ第二の聖地!?
1930年の開業当時、周辺は屈指のリゾートエリアだったそうで、この庭園も今の何倍もの広さだったとのことです。
シンメトリーに配されたこの塔はなんでしょうか。
私は避雷針だと思ったのですが、正解は煙突だそうです。確かに、各部屋に暖炉があったり厨房の排気に煙突が必要だったのですが、それがこんな華麗なデザインだとは・・・。
これは当時バーとして使われていた部屋の床です。タイル職人さんがあちこちに遊び心を発揮してとても味のある雰囲気に仕上がっています。下手ウマと言っては失礼でしょうが、独特のユルさがいい感じです。よく見るといろんな発見がありますよ。
そしてこれは、一部現代の職人さんが修復した床タイルです。微妙ですが、ちょっときっちりし過ぎている感じがしませんか。今は極力クレームのないように、きちんと仕上げることが求められているせいかもしれません。ですが、どちらに味わいを感じるでしょうか。
この建物は甲子園ホテルとして誕生しましたが、わずか14年営業しただけで戦争のため海軍病院として収容され、終戦後は米・進駐軍の将校宿舎・クラブとして使用されました。その後大蔵省の管理下におかれ、武庫川女子大学が譲り受けるという数奇な運命をたどって今に至ります。
きちんと手入れされ、今は建築学科の学生の生きた教材としてもスタジオが置かれたり、オープンカレッジで多くの人に開かれていることをライトや遠藤新は想像だにしなかったでしょうが、このように有効に使われているのは本当に素晴らしいと思います。
私は今回初めて見学させていただいたのですが、見どころが多くて一度ではとても足りなく思いました。機会があればまた行きたいです。
特にオープンカレッジのコーラスのクラスでは、例のホールで歌うことができるようなので、引退したときにはぜひ受講したいと思います。いつになるやら、それまでオープンカレッジが盛況でありますように。
所在地:西宮市戸崎町1-13
注)見学希望の方は事前申し込みが必要です。甲子園会館庶務課の見学受付専用ダイヤル(0798-67-0290)まで日程・人数等を連絡してください。
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