ページ

2011/11/16

『ヴェラ・ドレイク』

2004年/イギリス・フランス・ニュージーランド
監督/脚本 : マイク・リー

これもまた重い映画です。
1950年代のイギリスの労働者階級の家庭の主婦を主人公に、穏やかに静かに話が進みます。
この主人公ヴェラが本当に善人なんです。
その生活を丁寧に描いて、観ている私たちもヴェラのことが好きになっていくのに、事件が起きてその慎ましく幸せな生活が途絶えてしまいます。
それはヴェラが善意から行っていた望まぬ妊娠で「困っている娘さんたち」の堕胎の手助けが、当時違法だったためです。
長年行ってきた堕胎の処置が明るみに出てヴェラは罪に問われるわけですが、そもそも妊娠させた男たちは何も咎められず、その矛盾を思ってか、逮捕に来た警察官たちもとても紳士的で切なくなりました。
結局、法の裁きでヴェラは有罪となりますが、家族たちのそれぞれの反応も深い余韻を残しました。
重いけれど、ただ辛いだけの物語ではありません。

2011/11/14

『この自由な世界で』

2007年/イギリス・イタリア・ドイツ・スペイン
監督 : ケン・ローチ

タイトルとはうらはらに重く、救いのない物語です。
『自由』とは何か、弱い立場の者がさらに弱い者から搾取することもまた『自由』なのだと、この主人公のシングルマザーは自身に言い聞かせながら人間として堕ちていくのです。

彼女は本来冷酷無比な人物ではなく、自分と息子の生活をなんとかするため、そのための行動力を持ち合わせていたがため、どんどん深みにはまっていくのです。
イギリス社会の労働者階級や不法移民の問題をベースに、彼女の行動が圧倒的なリアリティをもって描かれていて、背筋が寒くなりました。

日本では多少状況は違いますが、昨今の経済状況で就職難、派遣切り、生活保護費の増加など暗い話題にはこと欠きません。
そこでは同じように弱者を食い物にした経済活動も後を絶ちません。
違法なやり方は論外ですが、うわべでは人を助けるような顔をしてうまい汁を吸っている、なんてこと『自由な世界』だから許される話ではないのに。

映画のラストでは、彼女はまだその仕事を続けています。
そして、この先ずっと彼女が自由でいられるかどうかわからないまま、映画は終わりました。

2011/11/12

『オール・アバウト・マイ・マザー』

1998年/スペイン
監督 : ペドロ・アルモドバル

ほとんどの登場人物が性別を問わず女として生きている、というちょっと変わった設定のストーリーです。
決してハッピーな物語ではないのですが、その「彼女たち」は物哀しくも滑稽で、愚かだけども逞しく、とても愛すべき人物として描かれています。

うまく説明できませんが、これはもちろんハリウッド映画ではなく、フランス映画にもない、まさにスペイン的な作品だと思います。
そして、若いペネロペ・クルスが美しい。

タイトル中の『マザー』はすべての女性に捧げる言葉なんじゃないかなという気がします。

2011/11/11

『マルホランド・ドライブ』

2001年/アメリカ
監督/脚本 : デイヴィッド・リンチ

正直、もう一度観ないと何も語れないです。

事故に遭って記憶をなくした美しい女が、たまたま知り合った女の助けを借りながら謎を解こうとしていく話ですが・・・。
さすがデイヴィッド・リンチ、一筋縄ではいかないストーリーで、私自身が迷宮に迷い込んでしまいました。
観終わってもなお釈然とせず、いろんな人のレビューを読んでやっと「そうだったのか」とわかったような気になっただけです。

人の嫉妬や羨望、妬み、愛憎から生まれる捻じれた世界が描かれています。

2011/11/10

『ブリキの太鼓』

1979年/西ドイツ・フランス・ポーランド
監督 : フォルカー・シュレンドルフ

言わずと知れた名作(と私は思ってる)です。
10年以上前に観て強烈な印象を受け、それ以来2度目の観賞です。

3歳で自ら成長を止めてしまった少年を主人公に、周囲の大人たちの醜さや第二次世界大戦中のポーランドの辛い状況を描いています。
時にグロテスクな描写に嫌悪感を抱く場合もあるかもしれません。

この主人公を演じたダーヴィッド・ベンネントがすごい!
「3歳で成長を止めた」とはいえ6歳くらいに見えたのですが、実は彼は当時12歳だったとか。
両親の離婚に際して彼自身成長を自ら止めたという話もあります。
その彼の表情がもうまったく子供らしくなく、恐ろしい目つきで神がかり的な演技をするのです。
ですが、その後彼はほとんど役者として活躍していないようなのです。
この映画に出演したことでかえってそうなってしまったのでしょうか。

原作者はギュンター・グラスというノーベル文学賞を受賞したポーランド生まれのドイツの作家です。
数年前に、若いころナチスの親衛隊に所属していたことを告白して大きな波紋を呼びました。その時代を生き延びるためにそうしたのか、実際ナチスに心酔していたのかはわかりませんが、その隠された事実がこの作品にもつながっているように思います。

この映画は万人向けではないと思いますが、観終わってなんとも言えない深い余韻を残します。

2011/11/09

『愛のむきだし』

2008年/日本 
監督/脚本 : 園子温

最近お気に入りの満島ひかりが主演女優ということで観てみました。
約4時間の大作なのですが、途中で集中力が途切れることもなく一気にラストまでいきました。
同じく主演の西島隆弘はたしかジャンルはアイドルの人でノーマークでしたが、意外と素でいい味だったと思います。
内容的にはR-15指定だしかなりカルト色も強いように思いますが、ハマればすごく楽しめると思います。私もこういうの嫌いじゃない、むしろ好きな感じです。
主演の2人以外の出演の方々も本当にいいお仕事されてます。

2011/11/04

もう11月、だけど

あっという間に今年も残すところ2か月を切りました
でも、11月に入ったというのにこのところ数日は最高気温が25℃以上つまり夏日ですよね。
11月のテーマ曲といえば『北風小僧の寒太郎』じゃないですか。
たしか木枯らし1号はもう吹いたと思うのですが、こんなにポカポカじゃ寒太郎も出る幕なしですよね。

もうすぐ東日本大震災から8カ月になろうとしています。1年の3分の2が過ぎたんだなぁ。
私が受講しているMOKスクールでは被災地支援活動のひとつとしてバザーをすることになりました。
建築関係者が参加しているスクールらしく建築関連のものを提供しようということで、私も不要のカウンター材や建具などをエントリーします。
これでうちも少しすっきりできればという作戦ですが、ほかの方の提供品を買っちゃう危険ももちろん大!
それでも、こうやってわずかでも支援の足しになれば本当に嬉しいことです。